長崎市深堀町の南端に位置する「土井の首(どいのくび)」という地名には、不思議な伝説が語り継がれています。現在は穏やかな漁村と造船所が広がるこの地ですが、かつては戦乱の歴史と因縁が絡む場所だったと言われています。

◇ 土井の首の由来
土井の首という地名の由来には諸説ありますが、一説によると「首」という言葉が示すように、戦の際に討ち取られた武将の首を晒した場所だったと言われています。戦国時代、この辺りは大村藩と島原領の境目にあり、領地争いが頻繁に起こっていました。敗れた者の首が塚に埋められ、それが「土井(塚のような地形)」の「首」と呼ばれるようになったという話が残っています。
◇ 消える灯台の怪異
土井の首には、かつて小さな灯台が建てられていたのですが、漁師たちの間で「夜になると灯りが勝手に消える」という奇妙な噂がありました。ある晩、見張りをしていた船乗りが、「灯台の光を消している人影を見た」と証言しましたが、近づくと誰もいなかったとか。人々は「戦で散った者の霊が、この地を守ろうとしているのではないか」と噂しました。
◇ 伝説が生んだ言い伝え
現在でも、土井の首周辺を船で通る際、「静かに通ると無事に進めるが、大声を出すと波が荒れる」という言い伝えがあります。これは、戦で犠牲となった武士たちの魂が、今も海を見守っているからだとも言われています。
深堀の土井の首は、単なる地名ではなく、長崎の歴史と戦の記憶を秘めた場所でもあります。今では静かな海辺の町ですが、その名の裏には、今も人々が語り継ぐ伝説が眠っているのです。
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