長崎市三和町には、古くから「消える灯り坂」と呼ばれる場所がある。そこは昔から地元の人々の間で「夜に歩くと不思議な現象が起こる」とささやかれてきた坂道だ。

この坂には、江戸時代の参勤交代で使われた古い街道が通っていたとされ、道の途中には石畳の名残や、かつて茶屋だったとされる跡地もある。
地元の住人によると、この坂を夜に歩いていると、ふと自分の影が消える瞬間があるという。そして、道を照らしているはずの街灯の明かりが一瞬だけぼんやりと揺らぎ、まるで誰かの影が横切ったかのように見えるのだ。しかし、あたりを見回しても誰もいない。
ある年、近くに住む学生がこの噂を確かめようと夜に坂を登った。彼はスマホのライトをつけながら歩いていたが、突然ライトが点かなくなり、同時に足元が見えなくなるほど暗くなったという。驚いて立ち止まると、耳元でかすかに「戻れ…」という声が聞こえた。慌てて駆け下りると、ライトは何事もなかったかのように再び点灯したという。
また、別の住人は「この坂を登るときだけ、なぜか足が重く感じることがある」と話す。まるで誰かに引き止められているような感覚に襲われるのだという。
この坂道にまつわる言い伝えとして、「昔、ここで旅人が何者かに襲われ、亡くなった」という話が残っている。その魂が今も坂をさまよい、通る人々に警告を送っているのかもしれない…。
あなたも夜にこの坂を歩くことがあれば、ふと明かりが消える瞬間に気をつけたほうがいいかもしれない。
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