長崎港を望む“神の島”にある、忘れられた船の物語
長崎市の沖合に浮かぶ神の島(かみのしま)と、そのすぐ近くにある鼠島(ねずみじま)。今では静かな風景が広がるこの海域に、かつて廃船が放置されていたことを覚えている人は少なくなりました。
その船には、「ただの廃船ではない」という噂が残されています。

鼠島の岸辺に佇んでいた謎の船
昭和の終わりから平成初期にかけて、鼠島の近くの海に、朽ちた小型船が長いあいだ放置されていました。地元では「もう動かなくなった漁船が捨てられたものだろう」と言われていましたが、実はその船には持ち主がいなかったのです。
行政に問い合わせても登録記録が見つからず、地元漁師の間でも「誰の船か分からない」「いつの間にかあった」という証言ばかり。不気味がられ、**“神の島の幽霊船”**とあだ名されていました。
船を見に行った者が口にする“音”
当時、その廃船に興味を持って近づいた若者たちがいました。あるグループは、干潮時に徒歩で船の近くまで行けることに気づき、カメラを持って上陸を試みました。
しかし、そのうちの1人が船の中を覗き込んだ瞬間、「ゴン…ゴン…」という不規則な音が船の奥から聞こえたといいます。
中には誰もいない。風も吹いていない。船は波に揺れていないのに、船底から響くような音だけが鳴り続けていたそうです。
彼らはすぐにその場を離れ、戻ってからも体調を崩したり、しばらくの間不思議な夢を見続けたりしたという証言もあります。
船の正体は?そしてその後は…
後に、その船は大雨で傾き、やがて完全に海へ沈んでいったと言われています。今ではその姿を見ることはできませんが、干潮時に鼠島周辺を歩いていると、船の破片のようなものが波打ち際に浮かぶことがあるとか。
地元の漁師は今でも、「神の島と鼠島の間は昔から“通ってはいけない水路”だった」と語ります。そこには、古くから海の神を祀るために決して踏み入ってはいけない“目に見えない結界”があるのかもしれません。
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